<メッセージ3>
 もう1段高い安全意識を

 地球温暖化の影響なのかどうか私にはわかりませんが、最近、異常気象による災害の激化が見られるように思います。それぞれの災害で亡くなられた方のご冥福をお祈りすると共に、被災された方に心からお見舞いを申し上げます。
 これらの災害は、個人のこれまでの経験や判断に頼って災害に対処することの危うさを改めて認識させるものでした。私たちがアウトドア活動を行うに際しても、天候急変に伴う事故や災害には充分に備えておかなければなりません。
 それにつけても思い出されるのは、2008年に神戸市の都賀川で起こった水難事故のことです。都賀川は両岸から切り下がったところを水が流れる川でしたが、阪神・淡路大震災の経験から水辺に降りられる階段がところどころに設置されていました。当日は14時頃までは晴天で、川遊びや川辺の散歩を楽しむ人が大勢いたそうです。ところが、14時30分頃から急激に濃い雲が全天を覆い雷鳴が鳴り始めたのです。36分頃から降雨が始まり40分頃には視界が悪くなるほどの激しい雨になりました。そして42分頃から都賀川の水位が上昇し始め、44分頃には遊歩道が冠水するほどになりました。河川敷にいた人たちのうち41人は自力で脱出しましたが、橋の下で雨宿りをしていた人など16人が流され、職員に引率されて遠足に来ていた小学生2人を含む5人は救助の甲斐なく亡くなることになりました。
 事故後の調査において、10分間で50cm以上水位が上昇する現象は2003年から2007年までの5年間に19回もあったというデータが示され、2008年に起こった事象が決して珍しいものではなかったことがわかりました。ヒトには、何らかの被害が予想される状況下にあっても「自分は大丈夫」、「今回は大丈夫」などと過小評価してしまう傾向(正常性バイアス)や、新しい事実に直面しても先入観に捕らわれてそれまでの考えをなかなか改めることができない傾向(確証バイアス)があることが知られています。従って、個人の判断には上記のバイアスがかかっていることを理解して、早め早めに過剰とも思えるほどの対応を積極的にとるよう意識的に心がけなければなりません。 よく言われることです。
 ところが、人には責任感や使命感というものが存在します。ここは自分ががんばって何とか無事に乗り切らなければならない、と考えることで判断の柔軟性が失われ、ますますバイアスのスパイラルに陥って周囲が見えなくなってしまうのです。ということは、リスクに直面している個人の心がけだけでは現実のリスクは回避できないことを示します。ここで必要なのが、危険の判断を個人に委ねない体制づくりです。予想される危険とその対処方法をあらかじめ決めておいて、ディレクターとリーダーで共有しておくことが必要です。また、現実の場面では周囲のリーダーの気づきとコミュニケーションが事故を回避する大きな力になります。
 これまでの延長線上の判断で対処するのではなく、安全意識のレベルをもう1段高いものにしていく必要があると考えます。









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